ひとり親家庭の自立支援給付金は介護資格の取得にも使える?対象制度と申請の注意点
目次
ひとり親家庭を対象とした就労支援制度の全体像
ひとり親で子育てをしながら働くのは大変です。
とくに介護業界への就職・転職を考えている方にとって、資格取得にかかる費用は大きな負担になります。
こうした状況を支援するために、国は「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業」を実施しています。
この事業には、大きく分けて2つの制度があります。
| 制度名 | 支援の内容 | 介護資格での活用例 |
|---|---|---|
| 自立支援教育訓練給付金 | 対象講座を受講・修了した場合に受講費用の一部を支給 | 初任者研修・実務者研修の受講費用を軽減 |
| 高等職業訓練促進給付金 | 養成機関で学ぶ期間中、生活費として毎月給付金を支給 | 介護福祉士の養成施設に通う期間の生活費を支援 |
どちらの制度も実施主体は都道府県・市区町村です。
自治体によって制度の有無や支給条件が異なる場合がありますので、お住まいの地域の窓口に事前相談することが前提となります。
自立支援教育訓練給付金|初任者研修・実務者研修の費用を軽減できる
制度の概要
自立支援教育訓練給付金は、ひとり親家庭の母または父が対象の教育訓練講座を受講し、修了した場合に受講費用の60%が支給される制度です。
支給額の上限は、受講する講座の種類によって異なります。
| 対象講座の区分 | 支給割合 | 上限額 |
|---|---|---|
| 一般教育訓練給付または特定一般教育訓練給付の対象講座 | 費用の60% | 最大20万円 |
| 専門実践教育訓練給付の対象講座 | 費用の60% | 修学年数×40万円(最大160万円) |
| 専門実践教育訓練給付の対象講座を修了後、1年以内に資格取得し就職した場合 | 費用の85% | 修業年数×60万円(最大240万円) |
(出典:こども家庭庁「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業について」)
なお、支給額の下限は12,001円です。
受講費用の60%が12,001円に満たない場合は支給対象外となります。
対象者の要件
自立支援教育訓練給付金を受給するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 母子家庭の母または父子家庭の父であり、20歳未満の児童を扶養していること
- 母子・父子自立支援プログラムの策定等を受けていること
- 就業経験や技能、資格の取得状況、労働市場の状況などから判断して、受講する教育訓練が適職に就くために必要と認められること
介護資格で使える講座
自立支援教育訓練給付金の対象講座は、雇用保険制度の教育訓練給付の指定教育訓練講座と、都道府県等が地域の実情に応じて対象とする講座です。
介護関連では、介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修が教育訓練給付の指定講座に含まれています。
介護職員初任者研修は「特定一般教育訓練給付」または「一般教育訓練給付」の指定講座、実務者研修は「専門実践教育訓練給付」または「一般教育訓練給付」の指定講座として、多くのスクールが厚生労働大臣の指定を受けています。
ただし、すべてのスクール・講座が指定を受けているわけではありません。
受講を検討しているスクールが教育訓練給付の指定講座かどうかは、厚生労働省の「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム」で確認できます。
雇用保険の教育訓練給付金との関係
雇用保険の教育訓練給付金を受給できる方は、自立支援教育訓練給付金との差額が支給されます。
両方の制度を併用すること自体は可能ですが、二重に受給することはできません。
たとえば、雇用保険の教育訓練給付金で受講費用の20%が支給された場合、自立支援教育訓練給付金では60%との差額にあたる40%相当が支給される仕組みです。
高等職業訓練促進給付金|介護福祉士を目指す方の生活費を支援
制度の概要
高等職業訓練促進給付金は、ひとり親家庭の母または父が就職に有利な資格を取得するために養成機関で学ぶ場合に、修業期間中の生活費を支援する制度です。
この制度は受講費用の補助ではなく、修業期間中の生活費の負担を軽減することを目的としています。
学費そのものは自己負担が原則ですので注意してください。
支給額
高等職業訓練促進給付金の支給額は、住民税の課税状況によって異なります。
<高等職業訓練促進給付金(月額)>
| 区分 | 住民税非課税世帯 | 住民税課税世帯 |
|---|---|---|
| 通常期間 | 月額10万円 | 月額70,500円 |
| 修了までの最後の12か月間 | 月額14万円(+4万円) | 月額110,500円(+4万円) |
支給期間は修業期間全体で、上限は4年間です。
<高等職業訓練修了支援給付金(修了時に一括支給)>
| 住民税非課税世帯 | 住民税課税世帯 |
|---|---|
| 5万円 | 25,000円 |
なお、自治体によっては国の基準に独自の上乗せ支給を行っている場合があります。
実際の支給額はお住まいの市区町村にご確認ください。
対象者の要件
高等職業訓練促進給付金を受給するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 母子家庭の母または父子家庭の父であり、20歳未満の児童を扶養していること
- 児童扶養手当の支給を受けているか、同等の所得水準にあること(所得水準を超えた場合でも1年に限り対象)
- 養成機関において6か月以上のカリキュラムを修業し、対象資格の取得が見込まれること
ほかにも、就業または育児と修業の両立が困難であると認められること、過去に同給付金を受給していないことなどの条件があります。
介護福祉士は対象資格
高等職業訓練促進給付金の対象資格には、介護福祉士が含まれています。
看護師、保育士、理学療法士、作業療法士、社会福祉士なども対象です。
介護福祉士を目指す場合、養成施設(専門学校など)に通って資格を取得するルートが対象となります。
養成施設の修業年限は2年間が一般的ですので、最大で2年間にわたって毎月の給付金を受け取れる可能性があります。
一方、介護職員初任者研修は修業期間が6か月未満(標準130時間)であるため、高等職業訓練促進給付金の対象にはなりません。
初任者研修の費用を軽減したい場合は、先に紹介した自立支援教育訓練給付金の活用を検討してください。
介護資格別|使える制度の整理
介護関連の資格ごとに利用できる制度を整理すると、次のようになります(2026年3月時点)。
| 介護資格 | 自立支援教育訓練給付金 | 高等職業訓練促進給付金 |
|---|---|---|
| 介護職員初任者研修 | ○(受講費用の60%、上限20万円) | ×(修業期間が6か月未満のため対象外) |
| 介護福祉士実務者研修 | ○(指定講座の区分により上限額が異なる) | △(6か月以上の課程は対象となる場合あり。自治体に要確認) |
| 介護福祉士(養成施設ルート) | △(自立支援教育訓練給付金との併給は自治体により異なる) | ○(養成施設での修業期間中、毎月給付金を支給) |
※いずれの制度も自治体によって取り扱いが異なるため、必ず事前にお住まいの窓口にご確認ください。
申請するときに必ず知っておくべき注意点
【最重要】受講を始める前に申請すること
自立支援教育訓練給付金も高等職業訓練促進給付金も、必ず講座への申し込み・受講開始の前に、お住まいの自治体に申請手続きを行う必要があります。
自立支援教育訓練給付金の場合、受講前に都道府県等から対象講座としての指定を受けなければなりません。
講座の申し込み後や受講開始後に申請しても対象にはなりません。
たとえば調布市では「受講申込後の申請については対象となりません」と案内されています(調布市「ひとり親家庭自立支援教育訓練給付金」)。
国分寺市でも「受講中または受講後の申請はできません」と明記されています(国分寺市「就業に関すること(ひとり親家庭)」)。
他の自治体でも同様のルールが設けられていますので、必ず受講前にお住まいの窓口で手続きを済ませてください。
高等職業訓練促進給付金も事前相談と申請が前提です。
たとえば調布市の場合、就労支援専門員への電話予約のうえ事前相談を受ける必要があります(調布市「ひとり親家庭高等職業訓練促進給付金」)。
先にスクールに申し込んでしまうと、給付金を受け取れなくなる場合があります。 気になる講座が見つかっても、まずは自治体の窓口に相談してから申し込みの手続きを進めてください。
申請から受給までの大まかな流れ
自立支援教育訓練給付金の申請手続きは、おおむね次のような流れになります。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ①事前相談 | お住まいの市区町村(町村の方は都道府県)の窓口に相談 | 受給資格の確認や必要書類の案内を受ける |
| ②講座指定の申請 | 受講したい講座について、自治体から対象講座の指定を受ける | 申請から指定まで数週間かかる場合がある。開講日に間に合うよう早めに相談を |
| ③講座の申し込み・受講 | 講座指定を受けてからスクールに申し込み、受講を開始する | 指定前の申し込み・受講開始は不可 |
| ④修了後に給付金を申請 | 講座修了後、自治体に給付金の支給申請を行う | 修了証明書や領収書などが必要 |
(調布市「ひとり親家庭自立支援教育訓練給付金」、国分寺市「就業に関すること(ひとり親家庭)」の手続きを例に一般的な流れを整理。
お住まいの自治体によって手続きの詳細は異なります)
受講したい講座の開講日が決まっている場合は、余裕をもって早めに相談を始めることをおすすめします。
必要書類の準備
申請には、戸籍謄本や住民票、所得証明書、児童扶養手当証書の写しなど、複数の書類が必要になります。
必要書類は自治体によって異なりますので、事前相談の際に確認しておくと手続きがスムーズに進みます。
自治体によって制度の有無や条件が異なる
この事業は国の制度設計に基づき各自治体が実施していますが、制度を設けていない自治体もあります。
支給額の上乗せや対象講座の範囲なども自治体ごとに異なりますので、お住まいの地域の窓口で最新の情報を確認してください。
問い合わせ先は、市にお住まいの方は市役所の児童福祉・ひとり親支援の担当課、町村にお住まいの方は都道府県の福祉担当課です。
介護資格の取得を考えているひとり親家庭の方へ
ひとり親家庭を対象とした給付金制度を活用すれば、介護資格の取得にかかる費用負担を大きく軽減できます。
とくに介護職員初任者研修は、介護業界で働くための入門資格として求人数も多く、資格取得後すぐに就職につながりやすい点が特徴です。
クリエ福祉アカデミーでは、介護職員初任者研修と実務者研修を開講しています。
自立支援教育訓練給付金の対象となる講座をお探しの方は、まずはお住まいの自治体に事前相談のうえ、クリエ福祉アカデミーの初任者研修や実務者研修の詳細もあわせてご確認ください。
※本記事の制度情報は、2026年3月時点のこども家庭庁および各自治体の公表情報に基づいています。
制度の内容は改正される場合がありますので、最新の情報は必ずお住まいの自治体窓口またはこども家庭庁の公式サイトでご確認ください。