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介護職が虐待を発見したらどうする?通報義務と対応手順を解説

介護職が虐待を発見したらどうする?通報義務と対応手順を解説
 

介護職が虐待を発見したらどうする?通報義務と対応手順を解説

介護施設で働いていると、利用者様への対応に「これは虐待ではないか」と違和感を覚える場面に遭遇することがあるかもしれません。
そのとき、あなたはどう行動すべきでしょうか。

高齢者虐待防止法では、介護職員に対して虐待の早期発見と通報の義務を定めています。
しかし、実際に虐待を目にしたとき、どこに報告すればいいのか、通報したら自分に不利益があるのではないかと不安に感じる方も少なくありません。

この記事では、介護職員が虐待を発見した場合の正しい対応手順と、法律で定められた通報義務、そして通報者を守る仕組みについて解説します。
利用者様の安全と尊厳を守るために、いざというときに適切な行動がとれるよう、ぜひ最後までお読みください。

1. 高齢者虐待の現状と介護職に求められる役割

介護施設における高齢者虐待は、残念ながら増加傾向にあります。
厚生労働省が2024年12月に公表した「令和5年度高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」によると、養介護施設従事者等による高齢者虐待と認められた件数は1,123件でした。
これは前年度の856件から267件(31.2%)増加しており、調査開始以来、過去最多の件数となっています。

市町村への相談・通報件数も3,441件に上り、前年度より646件(23.1%)増加しました。

虐待件数が増加している背景には、虐待に対する社会的な認知が広がり、通報や相談が以前より行われやすくなった側面もあります。
しかし、介護現場で働く職員として、虐待を未然に防ぐこと、そして万が一発見した場合に適切な対応ができることは、利用者様の命と尊厳を守るために欠かせない責務です。

同調査では、施設従事者による虐待の相談・通報者のうち、施設職員からの通報が最も多いことがわかっています。
介護職員は虐待を発見しやすい立場にあるからこそ、正しい知識と対応手順を身につけておく必要があります。

2. 高齢者虐待とは?法律で定められた5つの類型

高齢者虐待防止法の概要

高齢者虐待に関する法律として、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成17年法律第124号、以下「高齢者虐待防止法」)が2006年4月1日から施行されています。
この法律では、65歳以上の高齢者を対象として、養護者(家族など)または養介護施設従事者等による虐待を防止し、高齢者の権利利益を守ることを目的としています。

高齢者虐待防止法第5条では、介護施設の職員をはじめとする福祉関係者について「高齢者虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、高齢者虐待の早期発見に努めなければならない」と定めています。

高齢者虐待の5つの類型

高齢者虐待防止法では、高齢者虐待を以下の5つの類型に分類しています(同法第2条第5項)。

虐待の種類 内容 具体例
身体的虐待 高齢者の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること 殴る、蹴る、つねる、無理やり食事を口に入れる、ベッドに縛り付ける
介護・世話の放棄・放任(ネグレクト) 高齢者を衰弱させるような著しい減食または長時間の放置など、養護を著しく怠ること 食事や水分を与えない、入浴させない、必要な医療を受けさせない
心理的虐待 高齢者に対する著しい暴言または著しく拒絶的な対応など、心理的外傷を与える言動を行うこと 怒鳴る、無視する、子ども扱いする、「役立たず」などの暴言を浴びせる
性的虐待 高齢者にわいせつな行為をすること、または高齢者にわいせつな行為をさせること 本人の前で下半身を露出する、キスをする、裸にして放置する
経済的虐待 高齢者の財産を不当に処分すること、その他高齢者から不当に財産上の利益を得ること 年金や預貯金を本人の意思に反して使用する、金銭を渡さない

これらの行為は、単独で行われることもあれば、複数が重なって行われることもあります。
介護職員として日常業務の中でこれらのサインに気づくことが、早期発見の第一歩となります。

3. 虐待を発見したときの対応手順

虐待を発見した場合、または疑わしい状況を目にした場合、以下の手順で対応します。
一人で判断せず、組織として対応することが重要です。

ステップ1:利用者様の安全確保を最優先にする

虐待を発見した場合、まず利用者様の安全を確保します。

利用者様が身体的な危険にさらされている場合は、その場から引き離すなど、直ちに安全な状態を確保してください。
怪我や体調の変化がある場合は、応急処置を行い、必要に応じて医療職への連絡を行います。

この段階では、虐待を行った疑いのある職員を問い詰めたり、一人で事実確認をしたりしないでください。
状況の悪化を防ぐとともに、証拠の保全の観点からも、まずは上司への報告を優先します。

ステップ2:上司・施設長へ速やかに報告する

利用者様の安全を確保したら、直ちに上司または施設長に報告します。

報告の際には、以下の内容を整理して伝えましょう。

  • いつ(日時)
  • どこで(場所)
  • 誰が(関係者)
  • 何をしていたか(行為の内容)
  • 利用者様の状態

報告は口頭で行った後、記録として書面にも残すことが重要です。
記録は事実のみを客観的に記載し、推測や感情的な表現は避けてください。

ステップ3:組織として事実確認と対応を行う

報告を受けた施設は、組織として事実確認を行います。
個人の判断で通報を控えたり、事実を隠蔽したりすることは許されません。

事実確認の結果、虐待が認められた場合、または虐待の疑いがある場合は、施設として市町村に通報する義務があります。
通報後は、市町村や都道府県の指示に従い、改善計画の作成や再発防止策の実施など、組織として対応を進めていきます。

4. 通報義務と通報者の保護

介護職員に課せられた通報義務

高齢者虐待防止法第21条では、介護施設で働く職員に対して、通報義務を定めています。

同法第21条第1項では、介護施設の職員が自らの施設内で虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合、「速やかに、これを市町村に通報しなければならない」と規定されています。
これは努力義務ではなく、法律上の義務です。

また、同条第2項では、高齢者の生命または身体に重大な危険が生じている場合には、施設職員以外の発見者にも通報義務が課せられています。

虐待の確証がなくても、「虐待を受けたと思われる」段階で通報することが求められます。
確実な証拠がないからといって通報をためらう必要はありません。

通報者は法律で守られている

高齢者虐待防止法では、通報を行った職員を保護するための規定が設けられています。

同法第21条第6項では、守秘義務に関する法律の規定は「通報をすることを妨げるものと解釈してはならない」と定められています。
職務上知り得た情報を通報しても、守秘義務違反として責任を問われることはありません。

また、同法第21条第7項では、養介護施設の設置者等は通報を行った職員に対して「解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」と規定されています。
通報をしたことで職場で不利益を受けることがないよう、法律で守られていますので、安心して通報してください。

2024年度から義務化された虐待防止措置

2024年度(令和6年度)から、すべての介護サービス事業者に対して、高齢者虐待防止のための措置が完全義務化されました。

具体的には、以下の4つの取り組みが求められています。

  • 1.虐待防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催し、その結果を職員に周知すること
  • 2.虐待防止のための指針を整備すること
  • 3.虐待防止のための研修を年1回以上実施すること
  • 4.虐待防止措置を適正に実施するための担当者を配置すること

これらの措置が講じられていない場合、「高齢者虐待防止措置未実施減算」として、所定単位数の1%が減算されます。

5. 一人で抱え込まないための組織対応

なぜ一人で対応してはいけないのか

虐待を発見した職員が一人で対応することには、以下のようなリスクがあります。

一つ目は、事実確認の限界です。
一人で判断すると、客観性を欠いた対応になる可能性があります。
複数の視点で確認することで、より正確な事実把握ができます。

二つ目は、精神的な負担です。
虐待の発見は、発見した職員にとっても大きな精神的負担となります。
同僚や上司と情報を共有し、組織として対応することで、個人の負担を軽減できます。

三つ目は、対応の遅れです。
一人で悩んでいる間に、虐待が継続したり、状況が悪化したりする可能性があります。
速やかな報告と組織対応が、被害の拡大を防ぎます。

相談できる体制を日頃から確認しておく

虐待を発見した場合に備えて、日頃から以下の連絡先や相談体制を確認しておきましょう。

  • 直属の上司の連絡先
  • 施設長・管理者への報告ルート
  • 施設内の虐待防止担当者
  • 市町村の高齢者虐待相談窓口
  • 地域包括支援センター

夜勤中など上司が不在の場合の連絡方法も、事前に確認しておくことをお勧めします。

6. 日頃から意識しておくべきこと

虐待の発生を予防する意識

厚生労働省の調査によると、施設従事者による虐待の発生要因として最も多いのは「教育・知識・介護技術等に関する問題」です。
虐待の多くは、介護に関する知識不足や技術の未熟さ、認知症への理解不足などが背景にあります。

日頃から以下のことを意識しておきましょう。

認知症の利用者様への対応について学び続けることが重要です。
認知症の症状を正しく理解していれば、利用者様の言動に対して感情的にならず、冷静に対応できます。

また、自分自身のストレス管理も欠かせません。
介護職は精神的にも身体的にも負担の大きい仕事です。
ストレスが蓄積すると、つい荒い言葉遣いや乱暴な介助につながりかねません。
休息を十分にとり、悩みがあれば同僚や上司に相談する習慣をつけておきましょう。

不適切なケアに気づく視点を持つ

虐待は、突然発生するものではありません。
多くの場合、不適切なケアが放置され、エスカレートした結果として虐待に至ります。

日常業務の中で「これは不適切ではないか」と感じることがあれば、そのままにせず、チーム内で共有しましょう。
小さな気づきを共有し合える職場の風土が、虐待の未然防止につながります。

まとめ

介護職員として高齢者虐待を発見した場合、最も重要なのは利用者様の安全確保と、組織への速やかな報告です。
一人で抱え込まず、施設全体で対応することが、利用者様を守り、再発を防止することにつながります。

高齢者虐待防止法では、介護職員に対して通報義務を課すとともに、通報者を保護する規定も設けられています。
虐待の疑いを感じたら、ためらわずに報告・通報することが大切です。

利用者様の尊厳と安全を守ることは、介護職としての責務です。
日頃から虐待防止の意識を持ち、発見時の対応手順を確認しておきましょう。

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