介護の仕事は本当にきつい?データで見る介護職のリアル
目次
介護職の離職率は「全産業平均より低い」という事実
「介護職は離職率が高い」と思い込んでいる方がいますが、最新のデータはその逆を示しています。
公益財団法人介護労働安定センターの「令和6年度介護労働実態調査」(2025年7月公表)によると、介護職(介護職員+訪問介護員)の離職率は12.4%でした。 一方、厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」によると、全産業の平均離職率は14.2%です。
つまり、介護職の離職率は全産業平均を約2ポイント下回っています。 12.4%という数値は、令和5年度・令和6年度と2年連続で同じ水準を維持しており、長期的に見ても低水準で安定しています。 2007年当時の介護職の離職率は21.6%でしたから、17年間で約9ポイントも改善されました。
離職率が改善した理由
令和5年度調査では、離職率が低下傾向にある事業所に対してその理由を尋ねています。 結果は以下のとおりでした。
- 「職場の人間関係がよくなったため」:63.6%
- 「残業削減、有給休暇の取得促進、シフトの見直し等を進めたため」:45.6%
- 「職場全体で介護の質を高めるための意識を共有したため」:37.8%
- 「賃金水準が向上したため」:36.3%
職場の人間関係改善が最大の要因であり、労働環境や処遇の改善も進んでいることがわかります。
介護職の「きつさ」の正体とは
では、なぜ「きつい」というイメージがあるのでしょうか。 実際に介護職員が感じている悩みや負担について見ていきましょう。
介護職員が抱える悩み・不安
介護労働安定センターの令和6年度調査では、介護職員に「労働条件等の悩み」を複数回答で尋ねています。 主な回答は以下のとおりでした。
- 「人手が足りない」:49.1%
- 「仕事内容のわりに賃金が低い」:35.3%
- 「身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)」:24.6%
確かに人手不足や身体的負担といった課題はあります。 しかし、介護業界全体でこれらの課題に取り組んでおり、ICT機器や介護ロボットの導入も進んでいます。 令和6年度調査では、ケアの記録をパソコンやタブレットで入力できるようにしている事業所が増加しており、入所型施設ではベッドセンサーの導入も進んでいます。
見落とされがちな「対人業務の負担」
介護の「きつさ」というと、入浴介助や移乗介助などの身体的負担がイメージされがちです。 しかし実際には、対人業務による精神的な負担も大きいのが介護職の特徴です。
利用者やご家族への対応、多職種との連携、同僚への引き継ぎなど、介護の現場ではコミュニケーションが常に求められます。 認知症の利用者への対応や、ご家族からの要望への対応など、正解のない場面で判断を迫られることも少なくありません。
体力は働くうちに自然とついてきますが、こうした対人スキルは経験と学びを重ねて身につけていくものです。 後述する「離職理由」で人間関係が上位に挙がっているのも、介護が対人業務を多く含む仕事であることを示しています。
前職を辞めた理由
同調査では、離職経験のある介護職員に「前職を辞めた理由」も尋ねています。 令和6年度調査では、「職場の人間関係に問題があったため」が最も多く、次いで「法人・事業所の運営の在り方に不満があった」(17.6%)、「他に良い仕事・職場があったため」などが挙がっています。
興味深いのは、「介護の仕事自体がきついから」という理由が上位に入っていない点です。 離職の最大の理由は職場の人間関係であり、仕事内容そのものではありません。 職場環境さえ整っていれば、長く働き続けられる仕事だといえます。
介護職の給与は上昇傾向
「介護職は給料が低い」というイメージも根強いですが、処遇改善は着実に進んでいます。
厚生労働省の「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」(2025年3月公表)によると、介護職員の平均給与は以下のとおりです。
| 項目 | 2024年度 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 平均給与(月額) | 33万8,200円 | +1万3,960円(+4.3%) |
| 基本給(月額) | 25万3,810円 | +1万1,130円(+4.6%) |
2020年度の介護職員の平均給与は31万5,410円でしたから、5年間で約2万3,000円増加しています。 国は2024年度に月額6,000円程度の賃上げ施策を実施し、2025年度も2.0%のベースアップを目指しています。 今後も処遇改善は続く見込みです。
介護の仕事内容を具体的に知る
介護の仕事を検討するうえで、具体的な業務内容を把握しておくことは大切です。 介護サービスには、主に「身体介護」と「生活援助」の業務があります。
身体介護
身体介護とは、利用者の身体に直接触れて行う介助のことです。 厚生労働省の定義では、入浴・排泄・食事等の介護が該当します。
入浴介助
一人で入浴が困難な利用者に対して、脱衣・洗髪・洗身・入浴・清拭・着衣などをサポートします。 入浴介助には、身体を清潔に保つだけでなく、血行促進やリラックス効果をもたらす目的もあります。 浴室は滑りやすく転倒のリスクがあるため、安全に配慮した専門的なスキルが求められます。 また、脱水症状や冬場のヒートショックにも注意が必要です。
食事介助
一人で食事がうまくできない利用者に対して、食事の準備から摂食、片付けまでをサポートします。 利用者一人ひとりの嚥下機能(飲み込む力)は異なるため、食事姿勢の調整や適切な摂食量の確認、飲み込みの見守りなど、安全に食事ができるよう配慮します。
排泄介助
一人での排泄が難しい利用者に対して、トイレへの誘導や排泄のサポート、おむつ交換などを行います。 排泄は非常にデリケートな行為であり、利用者の羞恥心に配慮しながら、できる限り本人が自分でできる部分は見守り、必要な介助を行います。
移動・移乗介助
「起き上がる」「座る」「歩く」「寝返り」が困難な利用者に対して、日常動作のサポートを行います。 ベッドから車椅子への移乗や、車椅子からトイレへの移動など、利用者の身体能力に合わせて安全に介助します。 寝たきりを防ぐためにも、適切な移動介助は重要なケアです。
生活援助
生活援助とは、掃除・洗濯・食事準備・買い物など、利用者の日常生活をサポートする業務です。 直接身体に触れる介護以外の支援全般を指し、利用者が自立した生活を送れるよう支援します。 少子高齢化に伴い人材不足が深刻な介護施設や事業所では、介護助手としてこれらの業務を担う人材を確保することで、介護職員の負担軽減を図っているところもあります。
レクリエーション
施設では、利用者が楽しめるレクリエーションを企画・実施することも介護職員の仕事です。 体を動かす体操やゲーム、クイズ、季節の行事などを通じて、身体機能の維持・向上を図るとともに、利用者同士の交流を促します。 会話や笑顔が増えることで、認知症の予防効果も期待できます。
コミュニケーション業務
介護の仕事は、身体を使う業務だけではありません。 実は、対人業務の比重も非常に大きい仕事です。
利用者・ご家族とのコミュニケーション
利用者の体調や気持ちの変化を察知し、適切な声かけを行うことが求められます。 ご家族への状況報告や相談対応も大切な業務です。 信頼関係を築くためのコミュニケーション力は、介護職にとって欠かせないスキルといえます。
多職種との連携
介護の現場では、看護師・理学療法士・ケアマネジャー・医師など、さまざまな専門職と連携してケアを行います。 利用者の状態を正確に伝え、チームとして適切なケアを提供するための情報共有が日常的に発生します。
同僚との引き継ぎ
シフト制で働く介護現場では、勤務交代時の引き継ぎが重要です。 利用者の状態変化や注意点を正確に伝達し、ケアの継続性を保つ必要があります。
体力は働くうちに自然とついてきますが、こうした対人業務のスキルは意識的に磨いていく必要があります。 前述の離職理由で「職場の人間関係」が上位に挙がっているのは、介護がコミュニケーションを多く必要とする仕事であることの裏返しともいえます。 逆に言えば、人と接することが好きな方、チームで働くことにやりがいを感じる方には向いている仕事です。
介護の仕事のやりがいと魅力
介護の仕事には、確かに身体的な負担や精神的なプレッシャーがあります。 しかし一方で、多くの介護職員がやりがいを感じながら働いています。
仕事の満足度は高い
介護労働安定センターの調査では、「仕事の内容・やりがい」に対する満足度が高いことが報告されています。 介護職員が「この仕事を続けたい」と感じる理由としては、以下のような声が挙げられています。
- 利用者の身体機能が回復・安定したとき
- 利用者やご家族から「ありがとう」と感謝されたとき
- 利用者が心を開いてくれたと実感できたとき
- チームで連携してケアがうまくいったとき
「人の役に立っている」という実感を得られることが、介護職の大きな魅力です。
段階的なキャリアアップが可能
介護業界には、明確な資格制度とキャリアアップの道筋が用意されています。
介護職員初任者研修
介護の入門資格です。 厚生労働省が定める130時間のカリキュラムを修了し、修了試験に合格することで取得できます。 受講費用は3万円〜10万円程度、受講期間は1〜4ヶ月程度です。 無資格・未経験の方でも受講でき、年齢や学歴の制限もありません。
介護福祉士実務者研修
初任者研修の上位資格で、450時間のカリキュラムを学びます。 初任者研修を修了していれば130時間分が免除されます。 たん吸引や経管栄養といった医療的ケアも学べます。
介護福祉士(国家資格)
介護職唯一の国家資格です。 実務経験3年以上(従事日数540日以上)と実務者研修の修了が受験要件となります。 社会福祉振興・試験センターによると、第36回介護福祉士国家試験(2024年3月発表)の合格率は82.8%でした。
このように、資格を取得しながら着実にステップアップできる点は、介護職の大きな強みです。 資格を持っていることで給与アップにもつながります。 前述の厚生労働省調査によると、初任者研修を持っている介護職員の平均給与は32万7,260円で、無資格者よりも約3万円高くなっています。
介護職は「きつい」のか
最新のデータを見ると、「介護職=きつくて離職率が高い」というイメージは、現在の実態と合っていないことがわかります。
データが示す介護職の実態(2024〜2025年時点)
- 離職率は12.4%で、全産業平均(14.2%)より低い
- 離職率は2年連続で低水準を維持し、長期的に改善傾向にある
- 離職の最大理由は「人間関係」であり、仕事内容ではない
- 平均給与は33万8,200円で、年々上昇している
- 「仕事のやりがい」に対する満足度は高い
もちろん、身体的な負担や人手不足といった課題は依然としてあります。 また、利用者・ご家族対応や多職種連携など、対人業務による精神的な負担も見過ごせません。 しかし、業界全体で労働環境の改善が進んでおり、以前と比べて働きやすい環境が整ってきています。
介護の仕事が向いているのは、単に体力に自信がある方だけではありません。 人と接することが好きな方、チームで協力して働くことにやりがいを感じる方、誰かの役に立ちたいという気持ちを持っている方にこそ、向いている仕事です。
介護の仕事を検討されている方は、イメージだけで判断せず、実際のデータや職場見学などを通じて、ご自身の目で確かめることをおすすめします。
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