介護の転職活動は働きながらでもできる?在職中に進める具体的な方法と注意点
介護の仕事を続けていると、職場の人間関係や待遇面で悩みを抱え、転職を考える場面が出てくることがあります。
介護労働安定センターの「令和6年度介護労働実態調査」によると、介護職(訪問介護員・介護職員の2職種計)の離職率は12.4%でした(介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」、2025年7月公表)。
全産業の平均離職率14.2%を下回っているものの、毎年一定数の介護職が職場を離れているのが現状です。
では、転職を考えたとき、介護の仕事を辞めてから動くべきか、それとも働きながら転職活動を進められるのか。
結論からいえば、介護職は働きながら転職活動を進めやすい職種です。
その理由と具体的な進め方を、データをもとに解説します。
目次
介護職が転職を考える主な理由
まず、介護職が転職を考える背景を確認しておきましょう。
令和5年度の介護労働実態調査(労働者調査)では、直前の介護の仕事を辞めた理由として以下の回答が上位に挙がっています(介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」、2024年7月公表)。
- 「職場の人間関係に問題があったため」…34.3%
- 「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」…26.3%
- 「他に良い仕事・職場があったため」…19.9%
- 「収入が少なかったため」…16.6%
職場の人間関係がトップである状況は、過去の調査でも一貫しています。
令和6年度調査でも同様に、人間関係を理由に挙げる回答が最も多い結果でした(介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」概要、2025年7月公表)。
収入や運営方針への不満、将来の見通しが立たないといった理由も、転職を考えるきっかけとして少なくありません。
どの理由であっても、衝動的に退職するのではなく、在職中に冷静に次の職場を見極めることが大切です。
働きながら介護の転職活動を進められる3つの理由
シフト制で平日に動きやすい
介護職の多くはシフト勤務のため、平日に休みが入ることが珍しくありません。
施設見学や面接は平日に設定されることが多いため、土日休みの仕事と比べると、仕事を休まなくても日程を合わせやすい傾向があります。
早番の後の午後や、遅番前の午前中など、半日単位で時間を確保できる点もシフト制ならではの利点です。
介護業界は求人が豊富で選択肢が広い
介護関連職種の有効求人倍率は、2025年3月時点で全国平均3.97倍です(厚生労働省「介護人材確保の現状について」社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会 第1回資料、令和7年5月9日公表)。
全職業平均の1.16倍と比べて約3.4倍の開きがあり、介護職は求職者にとって選択肢の多い「売り手市場」が続いています。
求人数が多いということは、自分の希望条件に合う職場をじっくり探す余裕があるということです。
焦って退職してから探す必要がないため、在職中の転職活動と相性がよい業界といえます。
オンラインで情報収集が完結できる
求人検索、施設の情報収集、応募書類の作成まで、転職活動の多くはオンラインで進められます。
仕事の前後や休憩時間を使って少しずつ情報を集め、休日に施設見学や面接を入れるという進め方が可能です。
在職中に転職活動をする3つのメリット
経済的な不安がない
退職してから転職活動を始めると、収入が途絶えます。
雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)を受給できる場合もありますが、自己都合退職の場合は給付制限期間があり、すぐに受け取れるわけではありません。
働きながら転職活動を進めれば、毎月の収入が確保されているため、経済面でのプレッシャーを感じずに済みます。
焦って条件の合わない職場に決めてしまうリスクも下がります。
ブランクが生じない
介護業界での転職では、実務経験の継続が評価されるケースが多くあります。
退職から再就職までの期間が空くと、面接で理由を聞かれることもあります。
在職中に転職を決めて退職日と入職日を調整できれば、履歴書にブランクが生じません。
介護福祉士の受験に必要な実務経験の計算にも影響しないため、キャリアプランの面でも有利です。
今の職場を客観的に見直せる
転職活動を通じて他の施設の条件や雰囲気を知ることで、現在の職場の良さに気づく場合があります。
令和5年度の介護労働実態調査では、現在の事業所に勤め始めた理由として「通勤が便利だから」が50.3%でトップでした。
続いて「仕事の魅力ややりがいがあるため」が32.6%、「職場の人間関係がよいため」が31.4%となっています(介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」労働者調査、2024年7月公表)。
こうしたデータを見ると、通勤の利便性や人間関係の良さは、転職してから改めてありがたみを感じるポイントになり得ます。
他の職場と比較して初めて、今の環境が自分に合っているとわかることもあるため、在職中の転職活動には「現状を再評価できる」という大きなメリットがあります。
退職してから転職活動を始めるリスク
一方で、退職してから転職活動を始めた場合のリスクも把握しておきましょう。
収入の空白期間が発生する
退職後に転職先が決まるまでの期間は無収入です。
自己都合退職の場合、雇用保険の基本手当が受け取れるまで原則1か月の給付制限期間があります(令和6年法律第26号「雇用保険法等の一部を改正する法律」により、2025年4月1日以降の退職者から従来の原則2か月が1か月に短縮)。
なお、離職前1年以内または離職後に教育訓練給付の対象講座を受講した場合は、給付制限が適用されないケースもあります。
介護職員初任者研修や実務者研修にも対象講座があり、給付制限の解除を兼ねて退職後に受講する方もいます。
短い期間とはいえ、貯蓄が十分でないと生活費の不安から条件を妥協してしまいがちです。
焦りから転職先の選定が甘くなる
収入がない状態が続くと、「早く決めなければ」という焦りが出てきます。
施設の理念や人間関係、労働条件を十分に確認しないまま就職してしまうと、また短期間で退職を繰り返すことになりかねません。
転職回数が多いと不利になる場合がある
介護業界は人手不足とはいえ、採用側は応募者の定着意欲を重視します。
短期間での転職が続いていると、面接で理由を丁寧に説明する必要が出てきます。
在職中に慎重に転職先を選ぶことで、こうしたリスクを減らせます。
働きながら転職活動を進める具体的なステップ
ステップ1:転職理由を整理する
「なぜ今の職場を離れたいのか」を具体的に書き出しましょう。
人間関係の問題なのか、給与や待遇への不満なのか、キャリアアップを目指したいのか。
理由が明確になれば、次の職場に求める条件も自然と見えてきます。
理由によっては、転職ではなく上司への相談や異動で解決できるケースもあります。
ステップ2:希望条件に優先順位をつける
すべての条件を満たす職場を見つけるのは難しいため、優先順位をつけます。
たとえば、以下のような項目を書き出して、順位をつけてみてください。
- 給与・賞与の水準
- 通勤時間・交通手段
- 夜勤の有無・頻度
- 施設形態(特別養護老人ホーム、デイサービス、訪問介護など)
- 教育・研修体制
- 人間関係・職場の雰囲気
「絶対に譲れない条件」と「できれば満たしたい条件」を分けておくと、求人を絞り込みやすくなります。
ステップ3:情報収集を始める
求人情報はハローワーク、介護専門の転職支援サービス、求人サイトなど複数の経路で探すのが効果的です。
令和5年度の介護労働実態調査によると、採用がうまくいっている事業所は「職場の人間関係がよいこと」を最大の要因に挙げています(62.7%)(介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」、2024年7月公表)。
このことから、求人票の条件面だけでなく、職場の雰囲気や人間関係を実際に確認することが転職成功のカギになるといえます。
気になる施設があれば、見学を申し込みましょう。
実際に足を運ぶことで、求人票だけでは分からない雰囲気を肌で感じることができます。
ステップ4:応募・面接の日程を調整する
シフト制の利点を活かして、休日や早番後の時間帯に面接を入れましょう。
面接日程の調整が難しい場合は、転職支援サービスの担当者に代行を依頼することもできます。
面接では、現在の職場を一方的に批判するような言い方は避け、前向きな転職理由を伝えるのがポイントです。
たとえば「よりスキルアップできる環境を求めて」「利用者様とじっくり関われる施設で働きたい」など、具体的な言葉で伝えると好印象です。
ステップ5:退職時期を見据えて計画する
転職先が決まったら、現在の職場への退職の意思表示を行います。
民法上は退職日の2週間前に申し出れば退職は可能ですが(民法第627条第1項)、介護現場ではシフト編成や引き継ぎの関係上、1〜2か月前には伝えるのが一般的です。
就業規則に退職の申出時期が定められている場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
退職日と入職日のあいだに空白期間が生じないよう調整すると、収入面でもキャリア面でも安心です。
転職先を見極めるチェックポイント
転職活動では、次の職場で同じ悩みを繰り返さないことが最も大切です。
以下のポイントを施設見学や面接の際に確認しましょう。
職場環境を確認する
施設見学のときに、利用者様の表情や職員同士のやりとりを観察してください。
挨拶が自然に交わされているか、職員に余裕がありそうか。
こうした雰囲気は、求人票には載っていません。
教育・研修体制を確認する
入職後のフォロー体制や研修制度が整っているかどうかは、長く働けるかどうかに直結します。
プリセプター制度やOJTの仕組み、資格取得支援の有無を具体的に質問しましょう。
処遇改善加算の取得状況を確認する
介護職員等処遇改善加算を取得している施設は、給与面での上乗せが期待できます。
加算の取得状況は、求人票に記載されている場合もありますし、面接時に質問することもできます。
離職率や勤続年数を聞く
施設の離職率や平均勤続年数は、職場の定着度を判断するうえで参考になります。
直接聞きにくい場合は、転職支援サービスの担当者を通じて確認する方法もあります。
転職活動に資格取得を組み合わせる
転職のタイミングで、介護の資格を取得しておくと選択肢が広がります。
たとえば、介護職員初任者研修を修了していれば訪問介護員として働くことが可能になり、応募できる求人の幅が大きく広がります。
さらに上位の実務者研修を修了していると、サービス提供責任者としてのキャリアが開けるほか、介護福祉士国家試験の受験要件の一つを満たすことができます。
クリエ福祉アカデミーでは、働きながら通学できる介護職員初任者研修・実務者研修を開講しています。
資格取得と転職活動を並行して進めたい方は、初任者研修の詳細ページや実務者研修の詳細ページをご確認ください。
一人で進めるのが難しいと感じたら
働きながらの転職活動は、時間のやりくりが大変に感じることもあります。
そのような場合は、介護専門の転職支援サービスを活用するのも一つの方法です。
希望条件のヒアリング、求人紹介、面接の日程調整、条件交渉まで、転職活動の多くを代行してもらうことができます。
「まだ転職するかどうか迷っている」という段階でも、相談してみることで考えが整理されることがあります。
クリエ福祉アカデミーでは、介護人材養成スクールとして培ったネットワークを活かした無料の転職サポートを行っています。
資格取得と転職の両方を見据えたサポートが受けられるため、これからのキャリアを総合的に考えたい方に適しています。
まとめ
介護の転職活動は、働きながらでも十分に進められます。
むしろ、経済的な安定を保ち、冷静に次の職場を見極めるためにも、在職中に始めるのが賢明な選択肢です。
介護業界は有効求人倍率が全国平均で約4倍と高く(2025年3月時点)、求職者にとって選択肢が豊富な状況が続いています。
焦って退職する必要はありません。
転職理由を整理し、希望条件を明確にしたうえで、シフトの合間を活用しながら計画的に進めていきましょう。
必要に応じて資格取得や転職支援サービスを活用することで、より希望に合った職場と出会える可能性が高まります。