介護を身近に感じるには介護ボランティアがおすすめ!始め方・できること・ポイント制度まで解説
日本では、2026年度に約240万人の介護職員が必要とされており、現状から約25万人が不足すると試算されています。
2040年度にはその数が約272万人(不足約57万人)まで拡大する見通しです。
こうした社会背景のなかで、介護の仕事に興味はあるけれど、いきなり資格取得は不安と感じる方もいます。
そんな方に最初の一歩として強くおすすめしたいのが、介護ボランティアです。
費用をかけずに介護現場を体験でき、自分の適性を確かめる機会になります。
さらに、自治体によっては活動実績に応じてポイントが付与され、介護保険料の軽減や換金に活用できる制度もあります。
介護ボランティアとは
介護ボランティアとは、高齢者施設や地域の介護サービスを利用する方々を、無償でサポートする活動です。
話し相手になる傾聴活動や、レクリエーションの手伝い、食事の配膳補助などが中心となります。
専門的な知識や実務経験は必要なく、福祉に関心があれば誰でも参加できます。
ただし、介護ボランティアでできることとできないことには、明確な線引きがあります。
ボランティアでできること・できないこと
介護ボランティアの活動範囲は、受け入れ施設や団体によって多少異なりますが、おおむね以下のように整理できます。
| 区分 | 具体的な活動例 |
|---|---|
| できること | 傾聴(話し相手)・声かけ、レクリエーション(ゲーム・歌・体操)の補助・企画、配膳の補助、書道・編み物・楽器演奏などの特技披露、散歩や外出の付き添い補助、居室・共用スペースの清掃補助 |
| 対象外とされる活動の例 | 食事介助、入浴介助、排泄介助、移乗介助など身体介護全般 |
身体介護は利用者の安全と尊厳に直結します。
たとえば北九州市介護支援ボランティア事業では、身体介護は対象外の活動です。
本来は施設職員が行う行為とされています。
「配膳の補助」と「食事介助」は別の行為です。
配膳は食事を運んでテーブルに並べる作業ですが、食事介助は飲み込みやすい姿勢を整えながら口に食事を運ぶ専門的な行為であり、介護職員が担当します。
参考:北九州市社会福祉協議会「北九州市介護支援ボランティア事業」
自分がどこまで関われるかを事前に受け入れ施設や担当者に確認しておくと、当日戸惑うことなく活動できます。
介護ボランティアの3つのメリット
1. 実際の介護現場を体験できる
求人票やパンフレットには書かれていない現場の実情を、ボランティアを通じて体感できます。
施設の雰囲気、利用者様との距離感、スタッフ同士の連携の様子など、働いてみなければ分からないことが事前に把握できます。
公益財団法人介護労働安定センターの「令和6年度介護労働実態調査」(2025年7月公表)によると、中途採用者の離職理由のトップは「職場の人間関係」です。
ボランティアで施設の雰囲気を事前に確かめておくことは、就職後のミスマッチを防ぐうえでも大きな意味を持ちます。
2. 自分の適性を客観的に知ることができる
介護の仕事が自分に向いているかどうか、という不安をボランティアで解消できます。
利用者様と直接かかわることで、自分がどのような場面でやりがいを感じるのか、逆にどの場面で戸惑うのかを、気負わずに体験できます。
介護への関心が漠然としたものから具体的なイメージへ変わることが、最大の収穫です。
3. 資格・学習と組み合わせると理解度が上がる
介護職員初任者研修では、食事・入浴・排泄介助の手順やボディメカニクスなど、実践的な内容を多く学びます。
ボランティアを通じて施設の空気感や利用者様の様子を知っていると、研修で学ぶ内容と現場のイメージが結びつきやすくなります。
講義で手順を学ぶときも、なぜその手順が必要なのかを具体的に想像しやすくなります。
介護ボランティアの始め方:3つのルート
介護ボランティアへの参加ルートは、大きく3つあります。
ルート1:市区町村社会福祉協議会のボランティアセンターに相談する
最もスムーズな参加方法は、お住まいの市区町村の社会福祉協議会(社協)にあるボランティアセンターへの相談です。
社協のボランティアセンターでは、地域の受け入れ施設・団体の情報を一括で管理しており、希望する活動内容や日程に合わせてコーディネートを行っています。
後述するボランティア活動保険への加入手続きも、ここで行えます。
全国の社会福祉協議会・ボランティアセンターの所在地と連絡先は、全国社会福祉協議会の「地域福祉・ボランティア情報ネットワーク」で検索できます。
東京都内の場合は「東京ボランティア・市民活動センター(TVAC)」が広域窓口となっています。
ルート2:地域包括支援センターに問い合わせる
地域包括支援センターは、高齢者の生活全般を支える地域の相談窓口です。
介護予防や生活支援のボランティア活動の情報も取り扱っており、地域の実情に合った活動先を紹介してもらえます。
各市区町村に設置されており、自治体の広報やウェブサイトで場所を確認できます。
ルート3:施設に直接問い合わせる
特定の特別養護老人ホームや通所介護(デイサービス)施設に興味がある場合は、その施設へ直接問い合わせることもできます。
ただし、施設によって受け入れ可能な曜日や活動内容が異なります。
事前にどのような活動ができるか、保険への加入は必要かを確認してから申し込むとよいでしょう。
参加前の準備:ボランティア活動保険への加入
介護ボランティアを始める前に、ボランティア活動保険に加入しておくと安心です。
活動中に転倒してケガをした場合、または誤って利用者様に損害を与えた場合の賠償リスクに備えるための保険です。
ただし、学校管理下の活動や、免許・資格・単位の取得やインターンシップを目的とする活動は対象外です。
学生の方は、所属する学校にも補償の有無を確認してください。
この保険の対象は、社協に登録・届出・委嘱された活動などです。
受入先が別の保険を用意している場合もあるため、必要な補償を受入先や社協で確認しましょう。
全国社会福祉協議会が指定する「ボランティア活動保険」(2026年度仕様)の保険料と補償内容は以下のとおりです。
| プラン | 年額保険料 | 主な補償内容 |
|---|---|---|
| 基本プラン | 350円 | 死亡保険金1,040万円、入院日額6,500円、通院日額4,000円、賠償責任5億円(限度額)、食中毒・特定感染症・熱中症も対象 |
| 天災・地震補償プラン | 500円 | 上記に加えて天災・地震による事故も補償 |
加入は最寄りの市区町村社会福祉協議会の窓口で手続きできます。
年額350円という低コストで手厚い補償が受けられるため、加入してから活動を始めると安心です。
社協経由で参加する場合は、加入が参加の条件になっているかを窓口で確認しましょう。
施設に直接申し込む場合も、施設側に保険加入の確認を取っておくと安心です。
介護支援ボランティアポイント制度を活用する
介護ボランティアには、活動実績に応じてポイントが付与される「介護支援ボランティアポイント制度」を実施している自治体があります。
ポイントは介護保険料の軽減や換金などに活用でき、ボランティア活動への経済的な見返りが加わる仕組みです。
制度の始まり
この制度は、2007年9月に東京都稲城市が日本で初めて導入しました。
高齢者自身がボランティア活動に参加することで社会とのつながりを保ち、介護予防にもつなげるという発想が全国に広まりました。
2019年度時点でこの制度を実施する市区町村は全国の34.1%、593市町村に達しています。
自治体ごとの制度例
制度の内容(対象年齢・ポイント付与単価・年間上限)は自治体によって異なります。
代表的な3自治体の比較は以下のとおりです。
| 自治体 | 対象 | ポイント付与 | 年間上限 |
|---|---|---|---|
| 東京都稲城市 | 市内在住の65歳以上 | 1回の活動ごとに付与 | 最大5,000円相当 |
| 東京都世田谷区 | 区内在住の65歳以上(介護保険第1号被保険者・研修受講者) | 1時間100円相当、1日上限2ポイント | 年間120ポイント(12,000円相当)※令和6年度より単価を倍増 |
| 福岡県北九州市 | 市内在住の65歳以上 | 1回(1時間以上)200ポイント、1ポイント=1円 | 年間5,000ポイント(5,000円) |
(出典:稲城市公式 / 世田谷区公式 / 北九州市社会福祉協議会)
多くの自治体で対象年齢が65歳以上(介護保険第1号被保険者)に設定されていますが、年齢・対象・研修受講要件は自治体ごとに異なります。
お住まいの市区町村に問い合わせて、制度の有無と詳細を確認してください。
介護ボランティアと資格取得の正しい関係
介護ボランティアを経験すると、これが介護の資格取得に活かせるかと気になる方も多いでしょう。
制度上のつながりを正確に把握しておくことが大切です。
ボランティア経験は介護職員初任者研修の受講条件にはならない
介護職員初任者研修は、介護の基本的な知識と技術を学ぶ入門資格です。
受講に必要な条件は、厚生労働省「介護員養成研修の取扱細則について」に基づいて定められており、学歴・実務経験・ボランティア経験などの受講条件はありません。
スクールによって最低年齢(16歳以上など)の独自基準を設けている場合もありますが、ボランティア経験の有無は問われません。
ボランティアをしてから受講した方が有利、という制度的なメリットはなく、あくまで現場理解を深めるための経験として位置づけてください。
ボランティア経験は介護福祉士の実務経験には含まれない
介護福祉士国家試験を受験するには、実務経験ルートの場合、以下の2つの要件を両方満たす必要があります。
- 従業期間3年以上かつ従事日数540日以上の実務経験
- 実務者研修の修了
この「実務経験」は有償の介護業務として雇用契約のもとで働いた期間を指します。
無償のボランティア活動はこの実務経験には含まれません。
ボランティアをすれば実務経験を積んだことになる、というのは誤解ですので、注意してください。
どんな人が介護ボランティアに参加できるか
学生の場合
多くの社会福祉協議会や施設で、中学生・高校生の受け入れも行っています。
夏休みや地域活動の一環として参加する学生が少なくありません。
なお、小中学校の教諭の普通免許状取得を目指す大学生には、「介護等体験」が義務付けられています。
これは「小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律」(平成9年法律第90号)に基づくもので、特別支援学校2日・社会福祉施設5日の計7日間が必須です。
法律に基づく義務的な体験活動であり、自主的なボランティアとは法的な位置づけが異なります。
主婦・社会人の場合
仕事や家事の合間に参加できる単発ボランティアを募集している施設・団体も多くあります。
社会福祉協議会のボランティアセンターに登録しておくと、希望日程に合った募集情報を随時紹介してもらえます。
65歳以上のシニアの場合
多くの自治体が実施する介護支援ボランティアポイント制度の主な対象年齢は65歳以上です。
ボランティア活動を通じて社会とのつながりを維持し、自分自身の介護予防にもつながる活動として積極的に活用できます。
介護ボランティアから資格取得・就職へのステップ
介護ボランティアを経て、本格的に介護の仕事に進みたいと思ったときのキャリアパスは以下のとおりです。
ステップ1:介護職員初任者研修の受講
介護現場の基礎知識と技術を体系的に学ぶ入門資格です。
受講時間は講義と演習を合わせて130時間以上(厚生労働省「介護員養成研修の取扱細則について」)で、通学形式で約3〜4か月が目安です。
通学と通信(自宅学習)を組み合わせる形式なら、最短1ヶ月から修了を目指せます。
受講に資格・学歴・実務経験は不要です。
クリエ福祉アカデミーの介護職員初任者研修では、未経験の方でも理解しやすいカリキュラムで学べます。
通信と通学の併用形式で、短期コースなら約1ヶ月、土曜コース・日曜コースなら約3ヶ月で修了を目指せます。
ステップ2:実務者研修の受講(介護福祉士を目指す場合)
初任者研修の上位にあたる研修で、より実践的な知識と技術を習得します。
カリキュラムは全450時間ですが、初任者研修修了者は一部科目が免除され、320時間で修了できます。
介護福祉士国家試験の受験要件の一つでもあります。
クリエ福祉アカデミーの実務者研修では、初任者研修との同時受講(ダブル受講)にも対応しています。
ステップ3:介護の職場への就職
ボランティアで培ったコミュニケーション力と、研修で身につけた専門知識を武器に、就職活動を進められます。
どんな施設が自分に合っているか分からないという場合は、介護専門の人材紹介サービスを活用すると、自分の希望条件や適性に合った求人を効率的に探せます。
まとめ:介護ボランティアを、介護の現場を知るきっかけに
介護ボランティアは、利用者との関わりや介護現場の雰囲気を知る機会になります。
介護の仕事に興味がある方は、まずはお住まいの地域のボランティアセンターに相談してみましょう。
ボランティア経験は介護職員初任者研修の受講条件にもならず、介護福祉士の実務経験にも含まれません。
それでも、現場の雰囲気や利用者との関わりを知る機会になり、学びたい内容や働きたい職場を考える材料にできます。
いきなり資格の勉強はハードルが高いと感じる方こそ、まずはボランティアという入口から介護の世界を覗いてみてください。
現場を体験しておくと、資格取得に進むかどうかも判断しやすくなります。
介護の資格取得や転職に向けて、より具体的なサポートが必要な方は、クリエ福祉アカデミーへお気軽にご相談ください。